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「プロダクトが良ければ売れる。」
本当に良いものを作れば、お客様は使ってくれる。
お客様の課題解決に合った答えを、アプリの機能として用意しておけば、いずれは口コミで広がっていくだろう。
私は、そんなふうに考えていました。
でも、実際にお客様と向き合う中で、それだけでは足りないことに気付きました。
アプリを使いこなすまでの時間が取れない。
学習コストが高い。
これまでのやり方を変え、自分たちだけでDXを進めていく時間もない。
良い機能を用意したからといって、それだけで使ってもらえるわけではありませんでした。
だから今、私はCourseraで営業を学び始めています。
創業者である私自身がもっと前に出て、お客様と話し、売りに行かなければならないと思ったからです。
本当にニーズがあるのか。
お客様は何に困っているのか。
PICOには何を求めているのか。
営業のテクニックを身につけたい、というだけではありません。
私たちは、本当にそのお客様の課題を解決しようと考えているのか。
課題を解決する前には、まず導入のための地ならしが必要です。その地ならしをお客様と一緒に進めることも、私たちのようなアプリ提供会社の役割なのではないか。
それを感覚だけで進めるのではなく、きちんと理論立てて学ぶ必要があると痛感しました。
これまで私は、施工管理アプリPICOに興味を持ってくださったお客様に、デモアカウントを発行し、マニュアルのURLを送り、
「ご不明点があれば、お気軽にご連絡ください」
とお伝えしていました。
それで十分だと思っていました。
返事が来なければ、
「今回はご縁がなかったのかな」
と考えていました。
でも、営業を学び始めて気付いたことがあります。
せっかくご縁をいただいたのに、PICOを理解する作業を、お客様に丸投げしてはいけない。
私は「お気軽にご連絡ください」と言うことで、お客様をケアしているつもりでした。
でも実際には、お客様の側に、
「PICOを理解すること」
「自社での使い方を考えること」
「分からないことを整理して問い合わせること」
まで求めてしまっていたのです。
Courseraで最初に学んだのは、Buyer’s Journey、つまり「顧客の検討プロセス」でした。
その中に、Aligningという段階があります。日本語にすると、「要件のすり合わせ」です。
お客様の課題と、自分たちの提案をすり合わせる工程です。
この言葉を見た瞬間、
「あ、私はここを飛ばしていた」
と思いました。
私はPICOの機能を説明していただけでした。
でも本来、最初に確認するべきだったのは、
「お客様はPICOに何を期待しているのか」
「その目的にたどり着くために、PICOで何を実現できるのか」
ということでした。
機能を一方的に説明するのではなく、お客様が実現したいことを聞き、それにPICOをどう合わせていくのか、一緒に考える必要があったのです。
アプリ開発では、お客様からいただいた要望を、すべてそのまま実装することはできません。
一社のためだけに必要な機能を作り続ければ、開発コストが膨らみます。さらに、その機能がほかの利用者にとって使いにくいものであれば、プロダクト全体を複雑にしてしまいます。
安易に「できます」「作ります」と約束すると、後々トラブルにもなります。
そのため、開発会社では「いただいた要望をすべて実装するとは約束しない」という考え方が一般的です。
もちろん、個別のカスタマイズとして費用をいただき、対応する方法もあります。PICOでもカスタマイズはお受けしています。
ただ、実際にお客様との対話を増やしてみると、少し違うことが分かってきました。
「振込先を複数書けるようにしてほしい」
「図面はこう見たい」
「入力の順番を変えてほしい」
「GPSがあると助かる」
こうした声は、その会社だけに必要な特殊な要望ではありませんでした。
ほかの利用者にとっても便利になる、PICO全体を良くするためのヒントであることが多かったのです。
私たちが机の上で考えて作った機能だけでは、到底足りません。
現場のお困りごとを解決するには、現場の声を聞くしかない。
プロダクトは、エンジニアだけでは磨けません。
現場で使う人の経験と知恵が入って、初めて使いやすいものになっていきます。
私たちは、お客様から利用料をいただき、PICOを使っていただいています。そのうえ、現場で培ってきた経験や知恵まで教えていただいている。
これは、本当にありがたいことだと思います。
もちろん、一社の要望をそのまま実装すればよいわけではありません。
大切なのは、
「その会社だけが困っていること」
ではなく、
「多くの会社に共通する課題は何か」
を見つけることです。
現場の声を聞く。
なぜその機能が必要なのか、背景を理解する。
そこにある課題を一段抽象化する。
そして、できるだけ多くの人にとって使いやすい機能にする。
この作業は簡単ではありません。
一社のお客様に合わせすぎれば、ほかの会社が使いにくいアプリになってしまいます。一方で、汎用性ばかりを重視すれば、結局、誰の困りごとも解決できない機能になってしまいます。
現場の具体的な声を聞きながら、そこから共通する課題を見つけていく。
そこがプロダクト開発の難しさであり、醍醐味なのだと思っています。
営業なんてやったことがないので、今も本当に苦労しています。
断られるのはしんどいです。
つい、自己否定にもつながります。
お客様と話して、
「こんなアプリはいらない」
「ここがダメ」
と言われるのも怖い。
連絡しても返事がなかったり、興味を持ってもらえなかったりすると、やっぱり落ち込みます。
でも、たくさんの方と話し、たくさんの方の仕事を知る中で、少しずつ気付いたことがあります。
お客様と話すたびに、自分の中に新しい知見がたまっていくのです。
会社によって仕事の進め方が違う。
同じ業界でも、困っていることが違う。
自分たちでは当たり前だと思っていた作業に、実は大きな負担がかかっている。
もっと話さなくては。
もっと話していくと、自分一人の人生では決して知ることのなかった仕事や工夫、悩みが、次々に見えてきます。
そこには驚きがたくさんあります。
営業は怖い。
でも、もしかすると営業は、面白いのかもしれません。
Courseraは、大学や企業などが提供する講座をオンラインで受講できる学習サービスです。
私は今、Courseraでプロジェクトマネジメントと営業について学んでいます。
まとまった勉強時間を取るのは難しいのですが、昼休みや歩いている時間などに、少しずつ講座を進めています。
知識を得ると、それまで感覚でしか捉えていなかったことに名前がつきます。
「私ができていなかったのは、要件のすり合わせだったのか」
と分かるだけでも、次に何をすればよいのかが見えてきます。
知識を得ると、言葉に少し自信が出てきます。
自信が出ると、もっとお客様と話したくなります。
話すと、また新しい課題や学びが見つかります。
今は、そんな好循環が少しずつ生まれています。